前回に引き続き、東京の西日暮里で広いスタジオをお借りしての対面レッスンを行いました。ベルカントは正しく学ぶことで一歩一歩確実に進歩していきますが、すぐに結果が出るものではありません。今まで感じていなかったものを感じたり、意識していない部分が動かせるようになっていくためには、じっくりと時間をかけて学ぶ必要があります。現在の世の中は情報が溢れ即効性のある方法が求められますが、それとは正反対のものです。真摯に勉強を継続していくことで、確実に自分自身の感覚で感じられるようになり声が変わっていきます。今回の対面レッスンでは継続して学ばれているからこそ、確かに感じられるようになった瞬間に巡り合うことができました。

さて、対面レッスンとオンラインレッスンとの大きな違いは、平面ではなく立体的で息遣いまで肌で感じることのできる圧倒的な情報量です。オンラインレッスンでも、できるだけ生徒さんの様子を立体的に感じようとしていますが、やはり機械を通した歌声と画像では把握できないことが多くあります。歌う際のプントを感じる位置やジラーレさせる空間は、実際の空間で確認することで確実に掴んでいただけることを改めて実感しました。
レッスンの後は下北沢に移動して日本ロッシーニ協会さんの例会に参加。今回はコロナ禍における世界各地でのロッシーニ作品の演奏会やオペラ公演の様子を貴重な映像資料を交えて学ぶことができました。今までのような演奏ができなくなり中止になったものも多くありましたが、工夫を重ねて実現した演奏会やオペラ公演がいくつもありました。中には、歌い手同士の距離を保つために今までにはなかったようなタイミングを合わせる難しさを克服しての見事な演奏もありました。また、新しい歌い手の活躍も見ることができました。演奏会やオペラ公演も継続していかなくては受け継がれてきた伝統が途絶え、演奏の水準を保つことが難しくなってしまいます。世界各地でコロナ禍の困難に立ち向かっている姿に多くのことを学ぶことができました。
