ヴァイオリンの街「クレモナ」

クレモナの大聖堂

 かなり以前に一度だけ訪れたことのあるイタリアのクレモナ。今年の夏、久しぶりにその地を踏むことができました。ミラノから列車で1時間弱の距離にあるクレモナは古くからヴァイオリン職人の方々が活躍し、ストラディバリウスやグアルネリをはじめ数々の名器が生み出されてきた町です。私がクレモナを訪れたのは8月上旬の暑い日でしたが、落ち着いた古き良きクレモナの街並みが優しく迎えてくれました。

 今回、縁あってクレモナ在住のヴァイオリン職人、マエストロ高橋修一さんのヴァイオリン工房を訪ねることができました。高橋さんは数々のヴァイオリン制作のコンクールで受賞歴があるヴァイオリン制作家で、このような素晴らしいマエストロに直接お会いしてお話が聞けることはとても幸運でした。


 マエストロの温かいお人柄と職人としての鋭い洞察力、深い探究心に惹きつけられ、あっという間に時間が過ぎてしまいました。クレモナでのヴァイオリン作りについて、現在製作中の楽器も見せていただきながら丁寧にご説明をしてくださいました。ヴァイオリン作りの伝統を受け継ぎ、職人として何を大切にし、何を目指して日々制作に取り組んでみえるかなど、大変興味深いお話を聞かせていただきました。お話を聞く中で、イタリアの伝統的な歌唱法であるベルカント唱法とも、どこか共通する部分があることを感じました。また、ヴァイオリン作りの歴史と、音楽や声楽様式がどこかつながっているのではないかと思うほどでした。

 マエストロの工房を後にしてヴァイオリン博物館へ。事前にマエストロから話を伺っていたので、展示内容がより実感をもって理解でき、300年以上の歴史を刻む楽器が何か語りかけてくるような感覚を味わうことが出来ました。

  お忙しい中、ご丁寧に色々なことを教えていただきましたことへ深く感謝すると共に、工房でご馳走になった麦茶の味も忘れられない思い出の一つになりました。